しださがし

福岡県を中心に、見つけたシダ植物について掲載していきます。無断での転用・転載は禁止。

ナンピイノモトソウ

種名:ナンピイノモトソウ(Pteris x austrohigoensis Sa.Kurata, Pteridaceae)

解説:クマガワイノモトソウとキドイノモトソウの雑種

場所:熊本県

確認日:2018.1.4

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ある場所で一株だけ見つけました。最初はオオバノイノモトソウとクマガワイノモトソウの雑種として発表されたようです。

確認地はクマガワイノモトソウが多数生育する場所で、キドイノモトソウの他にイノモトソウやオオバノイノモトソウ、マツサカシダ、イツキイノモトソウも生育していました。

 

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ナンピイノモトソウの実葉。

クマガワイノモトソウに比べて、各羽片は明らかに細長く、また頂羽片は著しく長く伸張しています。

 

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ナンピイノモトソウの頂羽片基部(実葉)。

この程度の延着であれば"延着しない種"とみています。イツキイノモトソウに比べると明らかですかね。

 

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ナンピイノモトソウの最下側羽片(実葉)。

細長く、辺縁の膠質の部分はクマガワイノモトソウのように発達しています。キドイノモトソウと言えば偽脈が見られることが特徴ですが、この個体では明瞭な偽脈は確認できませんでした(胞子は不定形でした)。

 

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ナンピイノモトソウの裸葉(半分)。

各羽片の幅はクマガワイノモトソウと同じくらい幅広ですが、側羽片が2対と多いです。また各羽片の先端はクマガワイノモトソウより鋭頭でした。

 

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ナンピイノモトソウの葉脈。

辺縁に達するものと達しないものがありました。

偽脈が確認できなかったことが気がかりですが、辺縁に達しない脈が多くあり、葉身が軸に流れることもないので片親はキドイノモトソウだと推定するのが妥当ですかね。

イツキイノモトソウ

種名:イツキイノモトソウ(Pteris x calcarea Sa.Kurata, Pteridaceae)

解説:クマガワイノモトソウとイノモトソウの雑種

場所:熊本県

確認日:2018.1.3

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クマガワイノモトソウと同所的に生育していました。名前は最初に発見された場所の地名ですが、他の場所でも見つかります。有性生殖のクマガワイノモトソウと無融合生殖のイノモトソウ間の雑種とされています。

葉身が中軸に延着することや羽片の幅、色合い等から、両親種と識別しやすい雑種だと思います。全体にイノモトソウよりもがっちりとした重厚感がありました。

 

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イツキイノモトソウの中軸(実葉)。

イノモトソウのように軸に延着していることがわかりますが、ちょっとぎこちないですね。

 

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イツキイノモトソウの最下側羽片(実葉)。

このくらいのサイズのイノモトソウでは、側羽片から複数の裂片が分岐しますが、イツキイノモトソウでは分岐数は少なく、(0〜)1(〜2)本のみでした(5株の観察で)。

 

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イツキイノモトソウ(左)とクマガワイノモトソウ(右)。

イツキイノモトソウは各羽片が幅広く、また葉身の色合いがクマガワイノモトソウに類似していることがわかります。

 

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イツキイノモトソウの裸葉。

イノモトソウに比べて鋸歯が細かく均質で、また葉質はより硬質です。

 

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イツキイノモトソウの葉身の様子。

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イツキイノモトソウのソーラスの様子。

イノモトソウだとわずかに偽脈があり、クマガワイノモトソウには偽脈がありません。

少しはでるかと思いましたが、イツキイノモトソウでは偽脈は確認できませんでした。

 

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イツキイノモトソウの脈。

イノモトソウの脈は辺縁に達しない、クマガワイノモトソウの脈は辺縁に達するとのことで、中間的...と言うよりは達していない傾向が強かったです。

 

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イツキイノモトソウの鱗片の様子。

クマガワイノモトソウ

種名:クマガワイノモトソウ(Pteris deltodon Baker, Pteridaceae)

解説:石灰岩地に生育する三つ葉のイノモトソウ

場所:熊本県

確認日:2018.1.3

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年明け早々に活動しています。今年もシダ植物を掲載していきます。

今年最初のシダの名は、クマガワイノモトソウ("君の名は"的な)。ずっと気になっていたので、年明け早々探してきました。笑

分布は局所的ですが、この自生地ではそこそこの個体数を確認しました。生育基盤は石灰岩の割れ目等であり、風化した岩で真っ白になるような過酷そうな環境でした。

ミツバイノモトソウと言うだけあって、ほとんど全ての葉身が3つ葉(1対の側羽片と1つの頂羽片)になっています。側羽片は1対が普通ですが、大型の個体では2対、ごくまれに3対の場合もあります。

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側羽片が3対あるクマガワイノモトソウ(例外的に)。

側羽片が1対の場合だとわかりにくいですが、キドイノモトソウのように各羽片が中軸に延着しないタイプであることがよくわかります。

 

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クマガワイノモトソウの葉身基部と頂部(実葉)。

葉身は延着することなく、基部の柄で分断されます。実葉では、各羽片の頂部と基部を除いてソーラスの部分が反り返り、膠状の平滑な縁取りができています。頂部は鋭利な鋸歯状です。

キドイノモトソウのような偽脈はなく、葉は硬質で少し光沢がありました。

 

実葉は大きく、側羽片が盛り上がるように平開するため、遠目に見てもそれとわかります。一方で裸葉は実葉よりもかなり小さく、円く縮こまったような感じでした。

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クマガワイノモトソウの裸葉。

 

 

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クマガワイノモトソウの葉脈。

葉脈は伸びても接する程度で、オオバノイノモトソウのように辺縁と結合することはありません。辺縁に達しているものといないものがあるけど達する場合が普通のよう。

 

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クマガワイノモトソウのソーラス。

各羽片の頂部と末端を除いて辺縁につきます。

 

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クマガワイノモトソウの鱗片。

綺麗に撮れていませんが、黒褐色で光沢がありました。

掲載種(雑種)一覧

◇Aspleniaceae

Asplenium

イチョウシダ

[雑種]

イセザキトラノオ

 

◇Athyriaceae

Athyrium

アオグキイヌワラビ

サカバサトメシダ

サキモリイヌワラビ

サトメシダ

タカサゴイヌワラビ (鹿児島県)

トガリバイヌワラビ

トゲカラクサイヌワラビ

トゲヤマイヌワラビ

ホソバイヌワラビ

[雑種]

アイトガリバイヌワラビ

オオサカバサトメシダ

オオサトメシダ

カラサキモリイヌワラビ

ハツキイヌワラビ

ヒサツイヌワラビ

ホソバトゲカラクサイヌワラビ

ムラサキオトメイヌワラビ

ヤマサカバサトメシダ

ユノツルイヌワラビ

 

Diplazium

イヨクジャク

ノコギリシダ

[雑種]

アカメクジャク

セフリワラビ

ダンドシダ

ツクシワラビ

 

◇Dryopteridaceae

Arachniodes

オトコシダ

シビカナワラビ (鹿児島県)

ハガクレカナワラビ (佐賀県)

[雑種]

ヤマグチカナワラビ

 

Ctenitis

サツマシダ (鹿児島県)

 

Cyrtomium

イズヤブソテツ

テリハヤブソテツ

ナガバヤブソテツ

[雑種]

ナガバヤブソテツモドキ

 

Dryopteris

タカサゴシダ

タカサゴシダモドキ

ヒロハトウゴクシダ

 

Polystichum

キュウシュウイノデ (鹿児島県)

[雑種]

オンガタイノデ

キヨズミイノデ

 

◇Polypodiaceae

Leptochilus

コマチイワヒトデ (鹿児島県)

 

◇Pteridaceae

Pteris

キドイノモトソウ

 

◇Thelypteridaceae

Thelypteris

ミゾシダモドキ (鹿児島県)

 

セフリワラビ

種名:セフリワラビ

(Diplazium deciduum N.Ohta et M.Takamiya x D. nipponicum Tagawa, Athyriaceae)

解説:ウスバミヤマノコギリシダとオニヒカゲワラビの雑種

場所:福岡県の西部

確認日:2017.7.1, 2017.8.5, 2017.9.18

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福岡県の脊振山系のシダということでセフリワラビ。脊振山系では複数の場所で本雑種を確認しています。場所によっては一面に群生している場合も。

最大サイズはオニヒカデよりは小さいですが、ウスバミヤマよりは大型になり、70cmくらいにはなるかな。

両親種が夏緑性であるため、本雑種も夏緑性であり11月末には葉が枯れ落ちます。

 

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これが片親のウスバミヤマノコギリシダ(ネット上には正真正銘の本種の画像は少ないよう)。夏緑性。葉は柔らかい肉質的な感じで、標本にするとペラペラになります。

 

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片親のオニヒカゲワラビ。夏緑性。有性生殖型と無融合生殖型のどちらが親種になったのかは知りません。

 

セフリワラビの印象としては、どちらかというとウスバミヤマの色が強いかなと思います。特に幼株の時や秋葉ではミヤマ系の雰囲気を強く感じます。

 

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幼株のセフリワラビ。

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秋葉のセフリワラビ(実葉)。

 

 

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セフリワラビの最下側羽片。

ウスバミヤマの特徴から、小羽片基部は延着しており、また最下側羽片基部の小羽片は著しく短縮しています。

 

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セフリワラビの葉身中部の側羽片。

深裂〜複生で、ウスバミヤマにしては深く切れ込み、またやや独立しかかっている感がありますね。

 

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セフリワラビの葉身頂部はこんな感じ。

 

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セフリワラビの最下側羽片のソーラス。

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セフリワラビの葉身中部の側羽片のソーラス。

ウスバミヤマのソーラスが中間〜小羽軸寄り、オニヒカデのソーラスが小羽軸寄りであるため、セフリワラビのソーラスは小羽軸寄りにつきます。

脈は単状〜二又です。

オニヒカゲの特徴から、中軸や羽軸には短毛が生えます(散生〜やや密)。

 

以下参考までに両親種のソーラスなど。

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オニヒカゲワラビのソーラス。

小羽軸・裂片の軸寄りにつき、各軸は有毛。

 

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ウスバミヤマノコギリシダのソーラス。

やや軸よりについて、各軸は無毛。

 

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セフリワラビの葉柄中部の鱗片。

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セフリワラビの葉柄基部の鱗片。

 

葉柄中部〜基部の鱗片は褐色で、ごく基部と根茎の鱗片は黒褐色でした。

イズヤブソテツ

種名:イズヤブソテツ(Cyrtomium atropunctatum Sa.Kurata, Dryoteridaceae)

解説:並行的な羽片のヤブソテツ

場所:福岡県の西部、中部

確認日:2017.7.8, 2017.12.23

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前のシダ植物図鑑では生体写真から特徴がわからず、ヒントの少ないヤブソテツでしたが、典型的なものではその他のヤブソテツ類と容易に識別できます。

県内での個体数は、他のヤブソテツに比べて少なく、稀な種だと思います。

 

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イズヤブソテツの葉身頂部。

明瞭な頂羽片があります。葉色は黒っぽい緑色をしており、やや光沢があります。

葉の質感はかなりパキパキしており、硬いです。

 

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イズヤブソテツの最下側羽片。

 

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イズヤブソテツの中部の側羽片。

 

いずれも細長く、両側が側羽片中部過ぎまで並行的な幅をしており、上部で急に狭まります。

基脚はくさび形で90度くらい、羽軸の上側の方が下側に比べて幅広です。

ソーラスがついている部分は、表面に突出しますが、このような特徴はその他のヤブソテツ類でも見られるものであるため、この特徴のみをキーに本種と同定することはできません。

 

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側羽片は細鋸歯縁でずが、テリハヤブソテツに比べるとかなり硬質な鋸歯で切れ込みが深いです。

 

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イズヤブソテツのソーラスの様子。

全面に散在し、包膜は小さいです。

 

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イズヤブソテツの包膜。

中心部は黒褐色で辺縁は波状縁でした(標準図鑑では突起縁とされているけど)。

 

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葉柄基部の鱗片は濃褐色で、辺縁は淡色でした。

ナガバヤブソテツモドキ

種名:ナガバヤブソテツモドキ(クマモトヤブソテツ)

(Cyrtomium devexiscapulae (Koidz.) Ching × Cyrtomium laetevirens (Hiyama) Nakaike, Dryoteridaceae)

解説:ナガバヤブソテツとテリハヤブソテツの雑種。

場所:福岡県の東部、中部

確認日:2017.12.17, 2017.12.23

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ナガバヤブソテツが群生し、テリハヤブソテツもやや多く生育している場所で見つけました。特徴が中間的なので、両種に目が慣れているとぱっと見で認識できると思います。

 

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ナガバヤブソテツモドキの葉身頂部。

明瞭な頂羽片があることは当然ながら両親種と同じ。各部のフォルムはテリハに似ていますが、明らかに光沢が違いますね。

 

 

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ナガバヤブソテツモドキの最下側羽片と中部の側羽片。

ナガバヤブソテツに比べるとややツヤ消しになっていることがわかります。基部の耳片は発達せず、円みを強く帯びています(オニヤブソテツの盛り上がり方的な)。

 

以下、ちょっと両親種載せます。

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ナガバヤブソテツ(最下側羽片)

 

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テリハヤブソテツ(側羽片)

 

という具合に、ナガバヤブソテツモドキでは葉色・光沢が両親種の中間になっています。

 

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ナガバヤブソテツモドキの側羽片先端部。

 

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ナガバヤブソテツの側羽片先端部。

 

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テリハヤブソテツの側羽片先端部。

 

ナガバヤブソテツモドキでは、先端部の細鋸歯が両親種の中間(というよりナガバ寄り)で"ほぼ"全縁といった具合です。

 

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ナガバヤブソテツモドキのソーラスの様子。

両親種と同様、全面に散在します。包膜の中心が黒くなるかどうかは、個体により程度が異なるようですが、一部が黒くなることがあるようです(ほぼ一面淡褐色の場合もあった)。

 

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ナガバヤブソテツモドキの包膜

 

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ナガバヤブソテツの包膜

 

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テリハヤブソテツの包膜。

 

マムシヤブソテツとの差異はどこにあるのか、についてはまだ十分には把握できていません(まだ1株しか見たことない)。

が、差異は基本的に片親であるテリハヤブソテツと"ヤブソテツ類"の特徴の差であるものと考えています(無融合生殖種だから単純ではないんだとうけど)。

ホソバヤマヤブソテツ系のものが親であれば、葉がやや黒っぽくなるだろうし、ツヤナシヤブソテツ系のものが親であれば側羽片が幅広くなるかな?

あとは側羽片基部の耳片が多少とも出てくると思います。

ナガバヤブソテツモドキ自体には、かなりテリハヤブソテツ感があるので、生葉であれば気づけると思います。