しださがし

福岡県から九州各地を中心に見つけたシダ植物について紹介していきます。無断での転用・転載は禁止。

ベニシダ

種名:ベニシダ(Dryopteris erythrosora, Dryopteridaceae)

解説:マルバベニシダとハチジョウベニシダの雑種起源の無融合生殖種

場所:福岡県西部

確認日:2020.6.21

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ずいぶんと久しぶりの更新となってしまいました。サボっていた訳ではありません。諸々忙しかったのです。笑

ベニシダはその辺にありふれたシダですが、「これがベニシダ」と簡単に提示できるような代物ではなく、様々な形態の型が存在します(小羽片が細い型〜幅広い型、包膜が紅色になる or ならない等・・・)。とりあえず近所の山にあった型のみ掲載しておくことにします。

ベニシダは3倍体無融合生殖種で、ハチジョウベニシダ(2倍体有性生殖種)とマルバベニシダ(4倍体有性生殖型と3倍体無融合生殖型がある)の交雑に起源する種であるとされています(シダ植物標準図鑑Ⅱ、Hori et al. 2018*1より)。

 

 

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ベニシダの最下側羽片。

最下側羽片の下側(外側)第一小羽片が著しく短縮することはお馴染みの特徴です。小羽片は浅裂程度です。

 

 

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ベニシダの葉身中部の側羽片。

小羽片(裂片)の先端は鈍頭で、辺縁は浅い鋸歯縁になっています。

 

 

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ベニシダの葉身頂部。

葉身頂部はあまり鉾状になりません。大型になるとやや鉾状に見える場合もあります。

 

 

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ベニシダのソーラス。

この個体は綺麗な紅色に染まっていました。色の程度には変異があり、薄い紅色に染まる型や紅色にならない型も存在します(展葉時の葉の色も同じ)。

ソーラスは軸寄りに付いていますが、マルバベニシダに比べると鋸歯が明瞭な分、軸寄り感が少なめです(主観)。

 

 

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ベニシダのソーラスの拡大。

包膜は円腎形で全縁です。羽軸や中肋には袋状の鱗片が密につきます。

 

 

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ベニシダの鱗片。

この個体は褐色でしたが、色は黒褐色まで変異があります。マルバベニシダの硬質な鱗片に比べると少し柔らかいです。

 

 

なお、大型のベニシダがオオベニシダと同定されることがあるようですが、オオベニシダ自体は比較的小型の種です。

 

 

*1:Hybridization of the Dryopteris erythrosora complex (Dryopteridaceae, Polypodiidae) in Japan and adjacent areas. Hikobia 17: 299–313. 2018.