ギフベニシダ
種名:ギフベニシダ(Dryopteris kinkiensis, Dryopteridaceae)
解説:有性生殖するベニシダ類
場所:福岡県南部
確認日:2021.11.27
ギフベニシダです。ベニシダ類の中では名の知れた種だと思います。種名に反し、本州〜九州まで広く分布しています。日当たりの良い里地の石積み的な環境に生育し、竹林でも確認されるそうですが、本県では竹林ではまだ確認していません。
生育環境によって形態はやや変化します(よくあることですが)。以下、(1)〜(3)はいずれも同じ地点で見られた個体です。
ギフベニシダ(1)
ギフベニシダ(2)
ギフベニシダ(3)
葉身の全体形状は細長いことが多いですが、多少例外もあります。葉の色は直射日光が当たる場所では黄緑色、やや明るいくらいの場所では緑〜深緑色です。
↑ギフベニシダの最下側羽片
↑ギフベニシダの最下側羽片
最下側羽片の外側第1小羽片は、2番目に比して同定度またはやや短い程度で、ベニシダのように著しく短縮しません(2枚目は第1小羽片が出てない。笑)。
↑ギフベニシダの葉身中部の側羽片
↑ギフベニシダの葉身中部の側羽片
変異はありますが、小羽片は概ね三角形状をしており辺縁は浅裂〜鋸歯縁程度、基部は多少耳状に張り出します。
↑ギフベニシダの葉身上部
先端にかけて徐々に狭まり、全体にやや面長です。側羽片は中軸に対し狭い角度でつきます。
↑ギフベニシダのソーラス
ソーラスの付き方には変異があるようです。この個体は中間からやや辺縁寄りの位置についていました。なお、他のベニシダ類に比べて葉が小さい状態でもソーラスをつけるようです。
↑ギフベニシダの包膜
綺麗な全縁というわけではなく、多少とも波状縁となっています。標準図鑑Ⅱではほぼ全縁と記述されています。
なお胞子は正常で、概ね60個定度形成していることを確認しました。
↑ギフベニシダの中軸〜葉柄の鱗片
この個体の鱗片はやや疎らですが、発育の良い株や大型の葉では密につきます。鱗片は褐色〜黄褐色です。
↑ギフベニシダの葉柄基部の鱗片
褐色〜黄褐色の鱗片が密につきます。
↑ギフベニシダの羽軸の鱗片
鱗片の基部はほとんど袋状になりません。辺縁は多少とも鋸歯縁となっています。
↑ギフベニシダの葉柄の鱗片
鱗片の基部には微小な鋸歯があります。ただ、どの鱗片にもあるわけではなく、ほぼ全縁の鱗片も混じっていました。