オオフジシダ
種名:オオフジシダ(Monachosorum nipponicum, Dennstaedtiaceae)
解説:葉が細かく切れ込むフジシダの仲間
場所:福岡県南部
確認日:2023.8.20
またブログをさぼってしまいました。知人に更新宣言をしてしまいましたので、大晦日ですが更新します。笑
最近は仕事のほか植物的な諸々が慌ただしい日々を送っていました。
このブログはもはや身バレしているようなのですが、これまでどおり臆せずにいこうと思います。
今回はオオフジシダです。福岡県では分布範囲自体は広いのですが、2〜3株しか生育していない自生地が多く、群生する自生地はごく稀です。今回掲載する個体は八女市で見つけたもので、ここの自生地は150株以上が点在or群生する稀有な場所でした。
↑オオフジシダの葉身①
↑オオフジシダの葉身②
"オオ"フジシダとの和名ですが、葉身の長さ自体はフジシダとそんなに変わらず、葉の幅が広いことが特徴です。この点では"大きな"フジシダですね。葉身は40cmくらいにはなります。
葉身は3回羽状深裂程度で、小羽片が深裂する点もフジシダとは異なります。
↑オオフジシダの最下側羽片
本種に類似するものとしては、ヒメムカゴシダ(国外分布種のムカゴシダとの雑種)が国内に分布していますが、オオフジシダでは最下羽片の小羽片が内先(上側が先)に出る点が異なります。
写真は上側が葉身の先端側になります。
少しわかりにくいですが、側羽片の付け根付近の上側に小羽片があります。
↑オオフジシダの葉身中部の側羽片
葉身の中部でも最下の小羽片は内先(上先)に出ています。
小羽片は中裂から深裂程度です。
↑オオフジシダの葉身の先端
時期によるのかもしれませんが、ここの個体群はどの個体も無性芽をつけていませんでした。無性芽をつけない型はキシュウシダとして区別する場合があるようです。福岡で群生しない場所が多いのもキシュウシダの型が多いからかもしれません。
↑オオフジシダのソーラス(全体)
↑オオフジシダのソーラス(拡大)
ソーラスは裂片の脈端につくため、やや辺縁寄りにみえます。脈端ではありますが、写真を見ると若干脈背生でしょうか。
本種には包膜がないため、胞子嚢がむき出しの状態になっています。
胞子嚢は基部から成熟しているようで、褐色のものから未熟な白濁色のものまで観察できます。
中軸や羽軸、小羽片では脈を中心に褐色の毛(棍棒状の多細胞毛)が疎らについています。この毛は葉身の表面の脈上にも少しあります。
↑オオフジシダの根茎
たくさん生えていたので標本用に採集しました(採集は許可有り)。
根茎は斜上しており、葉柄基部に鱗片はありませんが多細胞毛はあります。