しださがし

福岡県から九州各地を中心に見つけたシダ植物について紹介していきます。無断での転用・転載は禁止。

ハツキイヌワラビ

種名:ハツキイヌワラビ(Athyrium x pseudoiseanum Sa.Kurata, Athyriaceae)
解説:ホソバイヌワラビとタニイヌワラビの雑種。
場所:福岡県の西部、湿った杉植林内。
 確認日:2017.7.8, 2020.7.19(2021.1.31更新)

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ハツキイヌワラビです。初見の印象は白っぽいタニイヌワラビで、一目でタニイヌワラビとホソバイヌワラビが混じっているなと感じました。
白っぽいというのはツヤ消しという意味で、日向で展葉したホソバイヌワラビの葉の質感に近い雰囲気があります。一方でタニイヌワラビのように常緑感のある葉質をしています。
ホソバの特徴としては、より長めの葉身、つや消し感。タニの特徴としては、厚紙質〜やや皮質であること、側羽片がほぼ無柄であること等。

 

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↑ ハツキイヌワラビの最下側羽片。

タニイヌワラビよりもやや切れ込みが深く、先端はゆるい鋭頭〜鈍頭です。タニイヌワラビの側羽片がほぼ無柄のため、ハツキイヌワラビでも柄は短いです。

 

 

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↑ハツキイヌワラビの葉身中部の側羽片。

典型的なタニイヌワラビに比べるとやはり切れ込みが深いです。

 

 

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↑ハツキイヌワラビの葉身頂部。
先端がやや尾状になる点はタニイヌワラビ的な特徴だと思います。

 

 

 

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↑ハツキイヌワラビの小羽軸上の突起

小羽軸上に顕著な突起があるのはホソバの特徴です。
仮にホソバではなくトガリバ的な種が相手だったとしたら、小羽片はより幅広くなると思います。

 

 

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↑ハツキイヌワラビのソーラス。

ソーラスには鉤型のものがよく混じり、軸に接してつきます。羽軸は僅かに有毛の場合があります(毛はユノツルに比べて圧倒的に少なく、ごく疎らなこともしばしば・・・)。

 

 

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↑ハツキイヌワラビの葉柄基部の鱗片。

 

葉柄下部の鱗片は黒褐色〜濃褐色です。ホソバイヌワラビの影響で、タニイヌワラビの鱗片にある光沢感は無くなっています(鱗片に光沢の無いタニイヌワラビもいますが)。
ちなみに胞子は不定形でした。