トミタカナワラビ
種名:トミタカナワラビ(Arachniodes x tomitae Sa.Kurata, Dryopteridaceae)
解説:ミドリカナワラビとハカタシダの雑種
場所:熊本県
確認日:2018.3.4
トミタカナワラビとしていますが、半信半疑です。ぱっと見でミドリカナワラビ感があること、ヤマグチカナワラビではないことは直観しましたがイツキカナワラビとかそのへんの近縁種をまだ認識したことがないもので...。
トミタカナワラビの葉身頂部の様子。
とりあえずは、(やや)明瞭な頂羽片があること、葉柄が緑色(藁色、後述)であることから、ミドリカナワラビや近縁なその他の種、サンヨウカナワラビ等ではないことはわかります。
参考に、こちらはヤマグチカナワラビの葉身頂部。
トミタカナワラビでは、小羽片がやや細っそりとしているのに対し、ヤマグチカナワラビでは四角形的であり異なることがわかります。葉質はトミタの方が明らかに硬質でした。
トミタカナワラビの最下羽片の様子。
最下羽片の外側小羽片が著しく発達しています。光沢は強めです。
トミタカナワラビの中部側羽片(小羽片)の様子。
小羽片はやや細長く、切れ込みが深い。裂片が細くまとまっており、隙間が目立ちます。裂片の先端は顕著な芒となっています。
参考にヤマグチカナワラビの中部側羽片。
こうして比べてみると、葉質や裂片の切れ込み具合、小羽片の形状等明らかに異なることがわかります。
トミタカナワラビのソーラスの様子。
軸と辺縁の中間位置についています。
トミタカナワラビのソーラスの拡大。
微妙に突起縁〜全縁でした(確認した時期がよくない可能性もある)。
裏面に毛が散生していることもわかります。
トミタカナワラビの葉柄基部の鱗片。
淡褐色でやや広く、ミドリカナワラビ的です。
葉柄は基部までしっかり緑色で、淡紅色でないことから、ミドリカナワラビ系の種そのものでないことがわかります。
トミタカナワラビの根茎の様子。
ミドリカナワラビよりも葉のつく間隔がやや広い気がします。
熊本県では、ミドリカナワラビの他にイツキカナワラビ等も記録があります。イツキそのものを私は見たことがないので、片親がイツキである可能性は棄却できずにいますが、その場合には包膜に部分的にでも毛状突起が見られるものかと思います。
頂羽片が明瞭となることから、もう片親はハカタシダ、オオカナワラビ、ホソバカナワラビが考えられます。オオカナワラビである可能性は前述の通り低いと考えられ、ホソバカナワラビである可能性は根茎の様子と確認地がかなり内陸であることから低いかと考えています。
ということで、なんだか裂片が切れ込み過ぎな感はありますが、ひとまずトミタカナワラビと同定してみました。