トゲヤマイヌワラビ
種名:トゲヤマイヌワラビ(Athyrium spinescens Sa.Kurata, Athyriaceae)
解説:ヤマイヌワラビに似ているけど軸上に顕著なトゲが生じる種。
場所:福岡県の西部。
確認日:2017.8.5
ネット上に正真正銘の本種が載るのは初めてかもしれません。筒井さんとお会いするきっかけになった思い出深いシダ植物です(半年前だけど)。
写真のようにやや地面に伏している葉と、直立する葉があるようです(どっちもソーラスはつける)。
和名や学名にもあるように、トゲヤマの特徴は各軸上に生じる顕著な突起ですが、他にもヤマイヌワラビに比べて葉身の幅がやや狭いことも識別点になります。あとはぎっしりとしている感じが特徴です(抽象的)。
羽片の柄はややはっきりしており、この個体では最下羽片で3mmありました。
小羽片はやや鈍頭で、円っこい形状をしており、最下羽片では小羽片がやや重なり合っています。切れ込みは中裂と深裂の間くらいかな?いや中裂かな。
こっちは立ち上がっているバージョン。小羽片はやや鈍頭気味で、最下羽片の小羽片はやっぱりちょっと重なっている感。
ちなみにこれが一番綺麗な葉で、ここ一帯の個体はだいたい虫食いに合い、葉身やソーラスがぼろぼろのものが多かったです。
ぼろぼろ。笑
そしてこれがぎっしりとしている感じ(その1)。全体に詰まった感じで、葉身はやや細長く、小羽片の間隔は狭く、特に最下羽片では重なっています(最下羽片がやや狭まるからかな)。
ぎっしりとしている感じ(その2)。葉柄は葉身の長さの割に太いです。
葉柄の色については、写真のような紫色からやや緑がかったものまであります。
ソーラスはやや軸寄りにつき、鉤形のものも混じります。小羽片の基部は若干耳状になっています。各軸の毛の量は個体により差がありそうでしたが、概して少ないです。
そしてこれが小羽片軸上の突起。ホソバイヌワラビよりやや短いです。突起はより細く繊細な感じで、ごく小さい場合を除き、小さい小羽片上にも生じていました。
同じくらいの大きさの時のトゲヤマ(左)とヤマイヌ(右)。
ヤマイヌにも小さい突起はありますが、トゲヤマの方が明瞭でした。
最後に鱗片。黒褐色〜濃褐色的な色で、辺縁はやや淡色、また明らかに幅広です。
ヤマイヌでもバイカラーの鱗片であることはありますが、トゲヤマではより幅広く、また質感としてはよりしっかり(ちろちろしない)しています。
同定に際しては各軸上に顕著な突起があることの他に、前述した通り小羽片の形状、葉柄、鱗片についても確認する必要がありそうです(もちろん胞子が定形かどうかも)。
慣れてくればトゲヤマイヌワラビっぽさは一瞥で認識できますが、私自身まだ解決できていない個体(トゲヤマと他の種との雑種と思しきもの等)もいくつかおり、トゲヤマ自体の変異がどこまでかもまだまだ観察が必要なよう。
ちなみに福岡県内の他の産地とされる場所の個体も確認をしてきましたが、いずれも鱗片がやや濃褐色・バイカラーのタイプのヤマイヌワラビのようです。