シビカナワラビ
種名:シビカナワラビ(Arachniodes hekiana Sa.Kurata, Dryopteridaceae)
解説:ミドリカナワラビ的なオオカナワラビ。
場所:鹿児島県本土。
確認日:2017.8.8
鹿児島シダの旅その2(笑)。↑シビカナワラビ①
本種は最下外側の小羽片がその上(2番目)に比べて著しく伸張しないことで有名ですね。ここには200株を超える多数の個体が生育していました。とりあえず一般的に認知されてそうなタイプを掲載してみましたが、現地ではこういうのはどちらかというと極端なタイプであるように思いました。他のも載せます。
シビカナワラビ②
シビカナワラビ③
類似種とされるオオカナワラビが緑(やや黄緑も)〜深緑色で変異するのに対し、シビカナワラビはだいたい各写真のような鮮緑色でした。
葉質は薄くてやや柔らかく、オオカナ比ではその2/3くらいの厚さです。
シビカナワラビ①の葉身頂部。明瞭な頂羽片があります。基部が広がるヤマグチカナワラビとの識別点になります。
シビカナワラビ①の最下側羽片基部。外側1番目が2番目とほぼ同じです。他にも、各小羽片は切れ込みが深いことがわかります。この個体では浅〜中裂してました。
①の(略した)真ん中くらいの側羽片基部。やはり切れ込みは深いです。個体によって切れ込みの深さには違いがありそうでしたが、オオカナよりは切れ込みが深い傾向はありそうでした。
①の頂羽片裏側。ソーラスは小羽片の辺縁と軸の中間に位置しています。小羽片の切れ込みが深めなために、中間位置に押しとどめられているような感じです。
①の側羽片の裏側。ソーラスは中間位置。上側優先についているようです。そのため、ソーラスが少ない場合は側羽片の上側に優先して並んでおります(多分オオカナもこんな感じだけど)。
小羽片の形状はオオカナよりは"ミドリカナ的"でやや長く鋭頭な傾向がありました(オオカナは立方体的で、シビカナはイルカの背中のヒレ的な感じかな)。
①は包膜かぴかぴだったので、別の個体の包膜の様子。オオカナだと(あるいはそれとの雑種のゴリカナワラビも多少は)包膜の辺縁が毛状であるのに対し、シビカナでは全縁で辺縁には毛状突起は全くありませんでした。
葉柄下部の鱗片はこんな感じ(軽く流す笑)。
冒頭にも述べたように「最下外側の小羽片がその上(2番目)に比べて著しく伸張しないこと」が本種の特徴と捉えがちですが、現地で様々な個体を観察してみたところ、60%くらいの決定打にしかならないかなと感じました。左右2本が(オオカナみたいに)著しく伸張している個体や最下羽片以外でも外側基部の小羽片が伸張する個体も稀にはいます。
小羽片はオオカナに比べてやや長く鋭頭な個体が多いのですが、オオカナとほぼ同じ形の個体もいるにはいます。
では何がシビカナワラビを特徴付けるのかと言いますと、やはりミドリカナ系の種なだけに葉が薄めであること、(よく発達した)小羽片はやや切れ込みが深いこと、ソーラスが中間くらいの位置(オオカナよりは中間寄り)であること、包膜が全縁であること、だと思います。
ちなみに冒頭の全体写真かわわかるように、小羽片の間隔は狭く、しばしば重なり合っているために側羽片がぎっしりと詰まっていることも特徴として捉えてもいいのかなと考えています。
ただ雑種のゴリカナワラビもたまに混生しているので、やはり包膜の辺縁が毛状になっていないことを確認することが識別には一番重要なポイントかもしれません。