アカメイノデ
種名:アカメイノデ(Polystichum x kurokawae, Dryopteridaceae)
解説:カタイノデとツヤナシイノデの雑種
場所:福岡県の西部
確認日:2019.6.23
アカメイノデです。カタイノデとツヤナシイノデという個性的な両親種の雑種で、一瞥で違和感を抱くような葉色をしています。この個体は葉身で60cm程もあり、かなり大型でした。
両親種と並べて比較していきます。
カタイノデ
ツヤナシイノデ
アカメイノデは、ツヤナシイノデの各部位(葉身頂部・小羽片)を鋭利にして、葉色に渋みを与えたような面持ちです。
色味を比べてみると以下のような違いがあります。
ツヤナシイノデ(写真上)とアカメイノデ(写真下)の葉色の違い。
ツヤナシイノデにカタイノデを混ぜたような色合いをしています。
アカメイノデの葉身頂部。
カタイノデの葉身頂部。
ツヤナシイノデの葉身頂部。
アカメイノデでは、形状や色味が中間的であることがわかります。
アカメイノデの葉身中部の側羽片。
カタイノデの葉身中部の側羽片。
ツヤナシイノデの葉身中部の側羽片。
小羽片の形状や色味が中間的、小羽片の付き方(間隔)はツヤナシイノデに類似しています。
アカメイノデのソーラス。
カタイノデのソーラス。
ツヤナシイノデのソーラス。
いずれの種も、ソーラスは軸と辺縁の中間につくため、雑種のアカメイノデのソーラスも中間に位置しています。ちなみに、ソーラスが葉身の上半部につくというツヤナシイノデの特徴は、以下の写真のように雑種のアカメイノデにもやや現れています。
※葉面全体にソーラスがつく種同士の雑種でないと判断できる。
アカメイノデの葉身基部のソーラスの様子(葉身長60cm程の葉)。
アカメイノデの葉身下部でのソーラスの様子。
サイゴクイノデやイノデモドキのようにソーラスが辺縁寄りの種がツヤナシイノデにかかった場合、葉身の上部ではソーラスが中間位置にあり、葉身の下部ではソーラスが辺縁によっているような場合があります(部分的に耳片部に優先したりとかも)。アカメイノデでは中間に位置しています。
※イノデモドキやサイゴクイノデの関与は考えにくい。
アカメイノデの中軸から葉柄にかけての鱗片。
カタイノデの中軸から葉柄にかけての鱗片。
ツヤナシイノデの中軸から葉柄にかけての鱗片。
カタイノデの鱗片は狭披針形、ツヤナシイノデの鱗片は広卵形、アカメイノデの鱗片は広披針形と中間的な形状です。また、アカメイノデの鱗片の辺縁は著しい毛状縁ではありません(イノデモドキは関与していない)。
アカメイノデの葉柄基部の鱗片。
カタイノデの葉柄基部の鱗片。
ツヤナシイノデの葉柄基部の鱗片。
ツヤナシイノデの鱗片も栗色になることがあるので、栗色であるだけでは雑種としての判断の根拠に乏しいですが、光沢があり鱗片の広い範囲が濃色になることはカタイノデ的ではあります。アカメイノデはカタイノデに比べて幅広い鱗片が多いですね。