種名:ヒロハナライシダ
(Arachniodes quadripinnata (Hayata) Seriz. subsp. fimbriata (Koidz.) Seriz., Dryopteridaceae)
解説:裂片が円っこいナライシダ。
場所:福岡県
確認日:2018.7.1(2016年にも県内の別の場所で確認)
ヒロハナライシダ。RDBの調査では確認できていないそうです。
識別にはやや悩む類になりますので、類似種であるナンゴクナライシダと比較しながら特徴を丁寧に整理してみます(自己満だけど笑)。
■最下側羽片の形状について
ヒロハナライシダの最下側羽片。
ナンゴクナライシダの最下側羽片。
両種とも、最下外側第1小羽片が2番目に比べて発達することはなく、同程度です。
最下外側第1小羽片どうしが重なるかどうかは葉の生え方によると考えるので、ここでは識別ポイントに考慮しません。
■中部の側羽片
ヒロハナライシダ。
ナンゴクナライシダ。
羽軸に対する小羽片の角度が、ヒロハナライシダの方が広い(開出気味)です。
※どちらも葉身長が50cm越えの大株です。
■上部の側羽片
ヒロハナライシダ。
ナンゴクナライシダ。
見た目かなり違いますね。ヒロハナライシダの方が小羽片間の隙間がやや狭いです。また、ヒロハナライシダでは小羽片が鈍頭で、ナンゴクナライシダではやや鋭頭です。裂片の鋸歯はナンゴクナライシダでははっきりしていますが、ヒロハナライシダではやや不明瞭で、円っこい印象を受けるかと思います。あとはヒロハナライシダの小羽片の方がやや細長いかな?
■葉身頂部
ヒロハナライシダ。
ナンゴクナライシダ。
縮尺は違いますが、ヒロハナライシダの方が、より隙間が少なく、詰まっているように見えます(小羽片間の隙間が狭い&鋸歯が浅いからかな)。
■ソーラス
ヒロハナライシダ。
ナンゴクナライシダ。
小羽片が鈍頭か鋭頭かとか、裂片の鋸歯とかについてはこの写真でよくわかります。
ソーラスのつき方にはあまり差異を感じません。
■包膜
ヒロハナライシダ。
ナンゴクナライシダ。
ヒロハナライシダは毛状縁、ナンゴクナライシダはほぼ全縁です。
ついでに鱗片が見えますよね?ヒロハナライシダの鱗片にも基部がやや袋状のものは混じります。両種の識別ポイントにはならなさそうです(胞子は両種とも定形)。
■軸の毛
ヒロハナライシダ(中軸)。
ヒロハナライシダ(羽軸)。
ナンゴクナライシダ(中軸)。
ナンゴクナライシダ(羽軸...だったかな笑)
毛の色味と色味が全く異なることがわかります。ヒロハナライシダの方がより褐色気味ており、多毛です。ここまでに掲載した小羽片の写真等を見比べてもわかるかと思います。
■葉柄基部の鱗片
ヒロハナライシダ。
ナンゴクナライシダ。
ヒロハナライシダでは褐色の鱗片が開出気味についており、ナンゴクナライシダでは葉柄にへばりつくようについています。ナンゴクの方がやや長いかな?
■総括
包膜の毛は一番わかりやすそうですが、ぱっと見では以下のポイントでヒロハナライシダを識別できそうです(福岡の個体ではね)。
「鈍頭の小羽片・鋸歯が不明瞭な裂片・小羽片の間隔がやや狭い・軸につく角度がやや広い」
つまりこういうことです。↓
ヒロハナライシダ。
ナンゴクナライシダ。