種名:ヤマグチカナワラビ(Arachniodes x subamabilis Sa.Kurata, Dryopteridaceae)
解説:オオカナワラビとミドリカナワラビの雑種。
場所:福岡県の西部、渓流沿いの杉植林的な雑木林。
確認日:2017.7.16
オオカナでありながらミドリカナの特徴を併せ持つ個体です。かっこいいですね。
以下のオオカナと比べると違いは一目瞭然です。
ちなみにこの個体は最下羽片外側の小辺がやや発達していますが、オオカナでも片方の羽片に2本伸張するのはむしろザラで、テンリュウとの有効な識別点にはならないのではと考えています。
胞子を確認するのが当然最も有効ですが、オオカナ自体も生育環境により変化しますしテンリュウカナモドキもありえますので、葉身に対する超羽片長の比率・葉質・小羽片の切れ込み、根茎の這い具合を総合的に判断しなければ識別は難しいようです。
(センスが鋭ければわかるのかも?)
雑種強勢を発動されていらっしゃるようで、ここに生育する一番の大株では葉身のみで約80cm程にもなり圧巻です。最下羽片外側の小羽片も複数伸張しています。
羽片に整然と並列する台形の小羽片にオオカナの特徴は見て取れますが、識別点の1つは頂羽片。
オオカナでは側羽片と同じように基部が狭まり独立した頂羽片がありますが、ヤマグチではミドリの影響を受けて頂羽片の基部はまとまらず、基部は緩やかに広がります。
ちなみにオオカナだと下の画像のような感じ。葉質も違いますね。
写真逆にすればよかった。オオカナの頂羽片がまとまるというのはこんな感じです。
側羽片もオオカナのように並行するのではなく、むしろ狭い三角状に狭まります。
基部以外の小羽片も切れ込みが深く、ミドリの影響が見られます。
もちろんここまで顕著な特徴が現れているのは、この個体が大株であるからで、子株の個体だと小羽片は切れ込まないし、ほとんど三角状にもならない。
この子株の2個体はどちらもヤマグチ。でもまあ、オオカナに比べて鮮緑色で葉質が薄く、やはり頂羽片のまとまりが弱い点はここでもはっきりしており識別することはできそうです。
この自生地ではオオカナはむしろ少なく、ミドリは1個体しか確認しておらず、ほとんどの個体がヤマグチでした。
裏面の様子。オオナカの小羽片よりもやや長く鋭頭です。またより深く切れ込むために、ソーラスが辺縁と軸の中間にまで及んでいます。
ちなみにオオカナのソーラスは下の画像のようにつく。
オオカナのソーラスはしっかり辺縁より。切れ込みも浅く、小羽片は鈍頭です。
ただ、小羽片の形状はオオカナ自体でもある程度変異があるので要注意です。
最近は屋外でもコンデジでここまでの画像が撮れます。凄いですね。
ヤマグチはミドリの影響で裏面は多毛。包膜の辺縁は両親とも突起がでるため、しっかり毛状を呈しています。