カラクサシダ
種名:カラクサシダ(Pleurosoriopsis makinoi, Polypodiaceae)
解説:優美な冬緑性シダ
場所:福岡県西部
確認日:2021.11.13
カラクサシダです。友人に触発されて見てきました。福岡県内では主にブナ帯に近い落葉樹林周辺でやや稀に見られます。冬緑性のシダとしては有名ですが、よく観察すると昨年の葉が黒くなりつつも残っていることが多いです。写真のように苔むした場所に生えていることが多いかな。地味で目立ちませんが、よく観察すると綺麗なシダです。
↑カラクサシダの葉身
葉身長で平均3〜5cm程度と小さな葉をつけます。2回羽状深裂葉で、側羽片の大きさはそれぞれ同じくらい。全体に整った形をしています。あと毛が多いですね。
↑カラクサシダの最下側羽片
↑カラクサシダの葉身中部の側羽片
↑カラクサシダの遊離脈
側羽片は特に辺縁に長毛が密生しており、葉身の表裏ともに長毛がやや密に生えます。
葉脈は葉の辺縁には結合せず、遊離しています。透かすとわかりやすいですが、よく見ると葉の表面に葉脈の末端が現れていることがわかります(米粒みたいな構造物)。
↑カラクサシダの中軸
中軸や羽軸の向軸側には長毛が密生していますが、背軸側にはほとんど毛がありません。前述のとおり、葉身の表面にも長毛がやや密にあります。
↑カラクサシダのソーラス(1)
葉の裏面、葉脈上に凝集したようなソーラスをつけます。ソーラスは葉の上側(頂点側)からつくようです。
↑カラクサシダのソーラス(2)※未成熟な胞子嚢が混在
↑カラクサシダのソーラス(3)※全て成熟した状態
↑カラクサシダのソーラス(4)※水に濡れた状態
カラクサシダの胞子はハイホラゴケ類のように葉緑体を持っているため、緑色をしています。そのこともあって、カラクサシダのソーラスは胞子嚢の状態によって(2)〜(4)のように色とりどりな色調を呈し、これが意外と綺麗です。
↑カラクサシダの胞子嚢
胞子嚢が正常に成熟しきったソーラスを実体顕微鏡で撮影したものです。どことなくガラス細工のようで綺麗ですね。
ちなみに、過去にカラクサシダの胞子を栽培したことがあるのですが、撒いてから発芽するまでの期間が短く、また前葉体が細いリボン状で面白いです。
カラクサシダの前葉体の写真は以下の文献にあるので関心のある方は参考までに。
「シダ類配偶体の形態多様性と比較発生学-分裂組織動態に注目して(今市 2014)」
↑カラクサシダの葉柄基部の鱗片
褐色の鱗片をやや密につけています。
↑カラクサシダの根茎
濃い緑色をしており、分岐をしつつ、長く這い回っていました。葉をつける間隔は広いです。