ベニオオイタチシダ
種名:ベニオオイタチシダ(Dryopteris erythrovaria K.Hori & N.Murak., Dryopteridaceae)
解説:オオイタチシダよりも葉質が薄い無融合生殖種。
場所:福岡県西部
確認日:2018.6.9
従来のオオイタチシダは、Hori et al (2018)*の研究において本種ベニオオイタチシダと、イワオオイタチシダ、オオイタチシダの3種に整理されました。
*Revised Classification of the Species within the Dryopteris varia Complex (Dryopteridaceae) in Japan
福岡県でも沿海地では普通に見られるようです。広く見られるオオイタチシダに比べると、ハチジョウベニシダが入っている分、葉質が薄く、葉身も大きくなり、より"ベニシダ感"を強く感じます。
ベニオオイタチシダの葉身。
オオイタチシダ(アツバ)に比べると葉身はより長楕円状に近い印象を受けました。光沢はあります。
ベニオオイタチシダの葉身の頂部。
やや穂状になるものの、オオイタチシダよりも狭まり方は緩やかです。
ベニオオイタチシダの最下側羽片。
オオイタチシダ(アツバ)の最下側羽片。
ベニオオイタチシダでは、裂片の辺縁が反り返らず、平らであることがわかります。
また比較的切れ込みが深いです。
最下外側小羽片の長さについては、個体によって伸張度合に差がありましたが、2番目の小羽片に比べて著しく発達することは少ないように思いました。
ベニオオイタチシダの小羽片(中部の側羽片)。
ベニシダ感があり、前述した通り裂片の辺縁は平ら、小羽片の先端はやや鋭頭です。
ベニオオイタチシダのソーラス1
ベニオオイタチシダのソーラス2
ベニオオイタチシダのソーラス3
ソーラスの位置は、辺縁と軸の中間です。この個体は包膜の中心が紅色ではなく、包膜の辺縁は全縁でした。
ベニオオイタチシダの羽軸の鱗片。
鱗片の基部は袋状のものが多いです。
ベニオオイタチシダの中軸(最下側羽片基部)の鱗片
オオイタチシダ(アツバ)の中軸(最下側羽片基部)の鱗片
ベニオオイタチシダでは、鱗片基部の淡色部分の広さがオオイタチシダに比べて狭いように思います。
ベニオオイタチシダの葉柄基部の鱗片。
ややツヤのある黒〜黒褐色といった具合です。形態的にはナンカイイタチシダの鱗片に似ているように思います。
葉身の長さが80cm程にもなり、遠目にはベニシダに見えるような大株もありました。