しださがし

福岡県から九州各地を中心に見つけたシダ植物について紹介していきます。無断での転用・転載は禁止。

フクレギシダ

種名:フクレギシダ(Diplazium pinfaense, Athyriaceae)
解説:草質だけど常緑性のノコギリシダ
場所:鹿児島県中部
確認日:2025.12.27


フクレギシダです。国内では天草の福連木で最初に発見されたことによるそうです。

ノコギリシダやイヨクジャクに近縁な種ですが、外見はイワガネゼンマイのような風貌です。
種の保存法絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)に平成30年2月に指定されており、生きた個体の採集・損傷・配布等が禁止されています。
なお、フクレギシダは本法における卵・種子の規制対象とはなっておらず、胞子のみであれば規制の対象外になるのかもしれません。ハナナズナ等の多くの種子植物は規制対象となっていますが、本種以外にもシダ植物で卵・種子の規制対象となっている種は存在しません。胞子は減数分裂を経て半数体となっているため、定義上、卵・種子の規制対象にならないのかもしれません。


岩の壁面に生育する個体


地上に生育する個体
今回確認した自生地では渓流沿いに生育しており、写真のように岩に着生している個体と地上に生育している個体(大小50株ほど)が確認されました。一部の個体は増水時に沈みそうな水際の石礫地にも生育していました。生育基盤の水分量よりは、空中湿度が生育条件により効いているのかもしれません。


フクレギシダの最下側羽片
側羽片には明瞭な柄があり、辺縁には顕著な鋸歯があります。葉脈は二叉分岐です。
葉の質感はイヨクジャクにかなり近い印象(草質)でしたが、イヨクジャク夏緑性であることに対し、フクレギシダは常緑性です。
葉には独特なツヤがあり(クチクラによる光沢とは異なる)、フラッシュを使って撮影すると光がかなり反射しました。


フクレギシダの側羽片の先端
鋸歯の大きさはやや不揃いで、重鋸歯状に見える部分もあります。


フクレギシダの頂羽片
頂羽片は明瞭で、側羽片と同じ形をしています。



フクレギシダのソーラス
ソーラスは線形で、やや羽軸寄りについていました。イブダケキノボリシダと同様、二叉分岐した葉脈の上側のみにソーラスがついています。


フクレギシダの根茎
根茎はほぼ直立しており、大型の個体は写真のように太い根をたくさん生やして壁面に着生していました。葉柄の基部には鱗片が疎らについています。



フクレギシダの葉柄基部の鱗片
鱗片は褐色で全縁でした。


イワガネソウ(左上)とフクレギシダ(右下)
本当は脈が似ているイワガネゼンマイと比べたかったのですが、近くに生育していなかったのでイワガネゼンマイと比較してみました。ツヤや鋸歯の感じが異なっています。