しださがし

福岡県から九州各地を中心に見つけたシダ植物について紹介していきます。無断での転用・転載は禁止。

イブダケキノボリシダ

種名:イブダケキノボリシダ(Diplazium crassiusculum, Athyriaceae)
解説:九州本土に唯一分布するキノボリシダ(キノボリシダの仲間ではない)
場所:鹿児島県北部
確認日:2025.12.26


年末は休暇をいただいて、久しぶりに北薩へ出かけてきました。
イブダケキノボリシダは今回目的としていたシダの一つでしたが、一日中歩き回っても一箇所でしか見つかりませんでした。もっと南方に行けば個体数は多いのでしょうか?
本種はここ北薩が国内の北限域で、鹿児島県本土ではほかにも南九州市※で最近発見されたようです。

"キノボリシダ"の名を冠した種ですが、シダ標準図鑑Ⅱによるとミヤマノコギリシダの仲間に分類されます。和名は日本で初めて発見された場所(沖縄の伊部岳)に由来するそうです。
葉身は30〜40cm程とDiplaziumの仲間では小型〜中型の部類になります。



イブダケキノボリシダの最下側羽片
側羽片は15〜20cm程、革質で硬いです。
葉縁は若干不揃いな鋸歯があるかな程度(ほぼ全縁)で、側羽片の先端部にのみ明瞭な鋸歯があります。



イブダケキノボリシダのソーラス(全体)


イブダケキノボリシダのソーラス(拡大)
ソーラスは線形で羽軸寄りにつきます。他のキノボリシダ類とは異なり、背中合わせにつくソーラスは見られません。ソーラスは、羽軸から出てニ叉分岐した葉脈の上側の脈のみに生じているようでした。包膜は古くなっており確認できず...。



イブダケキノボリシダの中軸
中軸の背軸側には小さい鱗片が疎らについています。羽軸も同様です。
なお、側羽片の柄は明瞭でした。



イブダケキノボリシダの根茎・葉柄基部
根茎は写真のように短く匍匐しており、名前に反して木に登ることはありません。
(前述のとおりキノボリシダの仲間でもないので、名前が災いしている・・・)
葉柄の基部には鱗片が密についています。



イブダケキノボリシダの葉柄基部の鱗片
鱗片はやや光沢のある黒褐色で、辺縁には明瞭な小突起があります。



イブダケキノボリシダの小株
小型の個体の葉は写真のように単葉でした。遠目には小さいヘラシダやイワガネソウと見間違えそうです。
生育環境は渓流沿いの常緑広葉樹林の斜面で、大型の個体が6株、小型の個体が6株確認されました。


(参考文献)
※立久井. 2025. 鹿児島県本土におけるイブダケキノボリシダ(メシダ科)の新産地