しださがし

福岡県から九州各地を中心に見つけたシダ植物について紹介していきます。無断での転用・転載は禁止。

ホソバカナワラビ

種名:ホソバカナワラビ

(Arachniodes exilis (Hance) Ching, Dryopteridaceae)

解説:沿海地寄りの樹林で見られるカナワラビ

場所:福岡県西部

確認日:2018.10.14

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ホソバカナワラビです。内陸部ではあまり見られず、沿海地寄りのやや乾燥した樹林の林床で見られます。胞子葉はあまり見かけません。

 

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ホソバカナワラビの最下側羽片。

基部から上部にかけて平行的であり、同程度の大きさの葉身ではコバノカナワラビよりも幅が狭い(細い)です。最下外側の小羽片は著しく発達し、側羽片に対して広い角度でつきます。比べるまでも無いけどコバノカナワラビだと以下のような感じ。

 

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コバノカナワラビの最下側羽片。

 

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ホソバカナワラビの葉身中部の側羽片。

同様に平行的で、小羽片はコバノカナワラビに比べて丸っこく、切れ込みが少ないです(基部よりでも小羽片が発達しないから)。

 

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ホソバカナワラビの葉身中部の側羽片の拡大。

 丸っこく、またコバノカナワラビに比べて鋸歯がより明瞭な気がしています。

 

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ホソバカナワラビの葉身頂部。

急に狭まり、鉾状になります(オオカナワラビ的な頂羽片を形成するわけではない)。

 

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ホソバカナワラビの根茎(写真一番上)

真っ直ぐに長く這い、広い間隔を開けて葉をつけます。

この写真では上から順に、ホソバカナワラビ、フクオカカナワラビ(ホソバカナワラビとツクシカナワラビの雑種)、ツクシカナワラビ(ホソバカナワラビとコバノカナワラビの推定雑種)、コバノカナワラビです。

コバノカナワラビ

種名:コバノカナワラビ

(Arachniodes sporadosora (Kunze) Nakaike, Dryopteridaceae)

解説:山地で普通に見られるカナワラビ

場所:福岡県西部

確認日:2018.10.14

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仕事が多忙で更新をサボっていました。更新はしていませんが、シダさがしは継続中です。笑

コバノカナワラビは福岡県内では最も普通に見られるカナワラビ類の1つです。

ホソバカナワラビよりは内陸寄り、より湿潤な林床に生育します。

 

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コバノカナワラビの最下側羽片。

基部は幅広く、徐々に狭まります。最下外側の小羽片は発達しますが、発達度合いには変異があります。ホソバカナワラビに比べるとより幅広く短いです。

 

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コバノカナワラビの葉身中部の側羽片。

以下のホソバカナワラビに比べるとやや細長く、切れ込みがはっきりしています。

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ホソバカナワラビの葉身中部の側羽片。

 

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コバノカナワラビの葉身頂部。

徐々に狭まり、頂羽片状にはなりません。

 

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コバノカナワラビの根茎(写真の一番下)

短く這い、葉のつく間隔は狭いです。

ちなみに上から順に、ホソバカナワラビ、フクオカカナワラビ、ツクシカナワラビ、コバノカナワラビです。

ヤワラハチジョウシダ

 種名:ヤワラハチジョウシダ(Pteris natiensis Tagawa, Pteridaceae)

解説:無柄のハチジョウシダ類

場所:鹿児島県

確認日:2018.8.19 

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ヤワラハチジョウシダです。ハチジョウシダ類を連投しました。

ハチジョウシダのように側羽片基部が狭まりますが、側羽片は無柄で、側羽片数も4〜5対程度と少なく、ビロードのような質感があります。質感はサツマハチジョウシダに類似していますが、サツマハチジョウシダの側羽片は幅が均一で、基部がより深い心形です。

 

ニシノコハチジョウシダ...軸折れする、側羽片幅は均一で基部は切形〜浅い心形
サツマハチジョウシダ...軸折れする、側羽片幅は均一で基部は深い心形で軸に重なる
アイコハチジョウシダ...軸折れする、側羽片幅は均一で基部はほぼ切形

 

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ヤワラハチジョウシダの最下側羽片。

サツマ、アイコ同様に普通1つが発達します。

 

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ヤワラハチジョウシダの側羽片。

側羽片は無柄で、基部にかけて狭まり、最大幅が中央付近にあります。また、やや鎌状に曲がります。

 

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ヤワラハチジョウシダの側羽片基部。

無柄の心形で、サツマハチジョウシダよりは心形の度合いが浅いです。

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サツマハチジョウシダの側羽片基部。

 

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ヤワラハチジョウシダの葉身頂部。

他のハチジョウシダ類と同様に明瞭な頂羽片があります。

 

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ヤワラハチジョウシダのソーラス。

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ヤワラハチジョウシダの羽軸周辺の葉脈。

ソーラスは裂片の辺縁、基部と最上部を除いてつきます。

各裂片の中肋最下部の、側羽片下側に付く脈(Y字型のやつ)は、羽軸から出ています。類似のサツマハチジョウシダでは、中肋と羽軸の結合点から出ます(以下)。まあ全ての結合点がそうというわけではないのだけれど。

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サツマハチジョウシダの羽軸周辺の葉脈。

詳しくはこちらの論文を参照ください。

CiNii 論文 -  わが国におけるハチジョウシダとそのなかまについて

 

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ヤワラハチジョウシダの羽軸と裂片の突起。

サツマハチジョウシダよりはやや長いものの、上記の論文にあるように、かなりはっきりした突起...というわけではなかった(無配生殖種だもの仕方ない)。

 

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ヤワラハチジョウシダの葉柄基部の鱗片。

濃褐色で、辺縁は淡色です。早落性で、成熟葉では少し残っている程度。

 

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ヤワラハチジョウシダの軸折れの具合。

葉柄が中軸に移行する箇所では、明瞭に屈折します。

サツマハチジョウシダ

種名:サツマハチジョウシダ(Pteris satsumana Sa.Kurata, Pteridaceae)

解説:無柄のハチジョウシダ類

場所:鹿児島県

確認日:2018.8.19

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サツマハチジョウシダです。ニシノコハチジョウシダと比べると遭遇頻度が低く、稀に点在しているような種です。葉身は中程度の大きさで、30cm程度の大きさの個体を見かけます。ヤワラハチジョウシダと同様にビロードのような質感がありますが、側羽片の基部が短縮しないことや、側羽片の基部が中軸を越えてしまうくらい深い心形であること、側羽片数が多いこと等が異なります。軸折れはします。

 

アイコハチジョウシダ...軸折れしない、側羽片幅は均一で基部はやや切形

ニシノコハチジョウシダ...軸折れする、側羽片幅は均一で基部は切形〜浅い心形

ヤワラハチジョウシダ...軸折れする、側羽片は基部にかけて狭まる

 

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サツマハチジョウシダの最下側羽片。

基部外側の裂片はアイコとヤワラ同様に基本的に1つが伸張します。

 

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サツマハチジョウシダの側羽片。

側羽片の幅は均一で、基部で狭まることはありません。側羽片の中軸につく角度は広いです。側羽片が鎌状になる度合いはやや弱いですが、上部の側羽片や先端部付近では鎌状になるようです。

 

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サツマハチジョウシダの側羽片基部。

無柄で深い心形をしており、中軸を越えて対の側羽片と重なっています。

ヤワラハチジョウシダも心形になりますが、ここまでではなく、また基部にかけて短縮するような違いがあります。

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ヤワラハチジョウシダの側羽片基部。

 

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サツマハチジョウシダの頂羽片。

他のハチジョウシダ類と同様、明瞭な頂羽片があります。

 

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サツマハチジョウシダのソーラス。

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サツマハチジョウシダの羽軸周辺の葉脈。

ソーラスは裂片の辺縁、基部と最上部を除いてつきます。

各裂片の中肋最下部の、側羽片下側に付く脈(Y字型のやつ)は、裂片の中肋と羽軸の合流点から出ています。類似のヤワラハチジョウシダでは、この脈が合流点ではなく、羽軸から出る(以下)。

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ヤワラハチジョウシダの羽軸周辺の葉脈。

※詳しくは以下の論文を参照ください。

CiNii 論文 -  わが国におけるハチジョウシダとそのなかまについて

 

 

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サツマハチジョウシダの羽軸と裂片の突起。

ニシノコやアイコに比べて突起は小さく、あまり目立ちません。

 

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サツマハチジョウシダの葉柄基部の鱗片。

濃褐色で、辺縁は淡色です。早落性で成熟葉では基部に少し残っている程度。

 

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サツマハチジョウシダの軸折れ具合。

葉柄から中軸への移行部、各側羽片の分岐点ではっきりと屈折します。

アイコハチジョウシダ

種名:アイコハチジョウシダ(Pteris laurisilvicola Sa.Kurata, Pteridaceae)

解説:無柄のハチジョウシダ類

場所:鹿児島県

確認日:2018.8.19

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アイコハチジョウシダです。福岡県でも確認していますが、いい写真を撮っていなくて...。側羽片が無柄のハチジョウシダ類のうち軸折れしないやつです。側羽片は中軸に対してやや狭い角度でつき、ニシノコハチジョウシダやサツマハチジョウシダに比べて斜上している感があります。あと、少し革質な感じがあります。

 

ニシノコハチジョウシダ...軸折れする、側羽片幅は均一で基部は切形〜浅い心形
サツマハチジョウシダ...軸折れする、側羽片幅は均一で基部が深い心形で軸に重なる
ヤワラハチジョウシダ...軸折れする、側羽片は基部にかけて狭まる

 

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アイコハチジョウシダの最下側羽片。

基部の裂片は1つが発達していることが普通で、稀に2つあるものがいるくらい。

 

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アイコハチジョウシダの側羽片。

側羽片の幅は均一で、基部にかけて狭まることはありません。鎌状にもならず、直線的です。

 

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アイコハチジョウシダの側羽片基部。

無柄ですが、サツマハチジョウシダのように中軸を超えるようなことはないです。

 

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アイコハチジョウシダの葉身頂部。

他のハチジョウシダ類と同様に明瞭な頂羽片があります。

 

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アイコハチジョウシダのソーラス。

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アイコハチジョウシダの羽軸周辺の葉脈。

ソーラスは裂片の辺縁、基部と最上部を除いてつきます。

各裂片の中肋最下部の、側羽片下側に付く脈(Y字型のやつ)は、どちらかと言えば羽軸から出ています。

 

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アイコハチジョウシダの羽軸と裂片の突起。

無柄のハチジョウシダ類では一番発達している印象です。

 

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アイコハチジョウシダの葉柄基部の鱗片。

濃褐色で、辺縁は淡色です。鱗片は早落性。

 

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アイコハチジョウシダの軸折れ具合。

葉柄から中軸への移行部、各側羽片の結合部の連続性は、ほぼ直線的、ほとんど軸折れしていません。

ちなみにサツマハチジョウシダだと以下のように各部で屈折します。

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サツマハチジョウシダの軸折れ具合。