キリシマイワヘゴ
種名:キリシマイワヘゴ(Dryopteris hangchowensis, Dryopteridaceae)
解説:有性生殖するイワヘゴの仲間
場所:宮崎県
確認日:2020.6.20
キリシマイワヘゴです。国内では徳島県と宮崎県にのみ現存しており、この個体は正真正銘霧島のもの。気合で見つけ出してきました。
シカの採食圧の増加に伴い個体群の規模が著しく衰退してしまった希少性の高い種です。種の保存法の指定を受けています。見つけたら宮崎植物研究会へご報告を。
Hori et al. (2019) 「Genome Constitution of the Dryopteris atrata Complex (Dryopteridaceae)」によれば、キリシマイワヘゴは遺伝的にイワヘゴとオクマワラビの祖先種であると考えられています。イワヘゴはツツイイワヘゴと、オクマワラビはクマワラビとの組み合わせです。
そう考えると、イワヘゴはきらびやかな遺伝的背景を持つ種であるんだなと思ったりします。また、アイノコクマワラビについては、オクマワラビ(キリシマイワヘゴ✕クマワラビ)✕クマワラビ、ということでクマワラビ感がより強めに感じられるのではないかと思います。
キリシマイワヘゴの葉身。
シダの会会報 Vol.4 No.32の南谷先生の記事に、特徴の詳細は記述されています。
遠目には、葉身が黄緑色であること、裂片が立体的で目立つことが特徴です。
かっこいいですね。
キリシマイワヘゴの葉身中部の側羽片(自然光&フラッシュ使用)。
側羽片の裂片は立体的で、反り返るようについています。裂片が「反り返る」だけではツクシイワヘゴとの区別に迷うかもしれません。
識別点としては、キリシマイワヘゴの裂片は切れ込んだ部分がくびれる(引き締まる?)ように狭まります。慣れてしまえば以下のツクシイワヘゴの反り返り具合との識別は容易です。
参考:ツクシイワヘゴの側羽片。
キリシマイワヘゴの葉身下部。
側羽片の切れ込み自体が中裂程度と深めですが、葉身下部の側羽片では側羽片の最下裂片が切れ込みきって独立します。観察した限りでは、下から4〜6番目の側羽片までは最下裂片が独立するようです。
キリシマイワヘゴの葉身頂部。
矛状にはならず、なだらかに狭まります。
キリシマイワヘゴのソーラス。
ソーラスは軸と辺縁の中間位置に広くつきます。包膜はツクシイワヘゴのように小さいわけではありません。
キリシマイワヘゴの葉柄基部の鱗片。
鱗片の色は黒ではなく、濃褐色(〜黒褐色)です。鱗片の辺縁は著しい突起縁で、特に葉柄中部〜葉柄基部にかけての鱗片はささくれるように激しい突起がついています。