しださがし

福岡県から九州各地を中心に見つけたシダ植物について紹介していきます。無断での転用・転載は禁止。

ツクシヤブソテツ

種名:ツクシヤブソテツ

(Cyrtomium macrophyllum (Makino) Tagawa var. tukusicola (Tagawa), Dryopteridaceae)

解説:羽片基部が鋭角のヤブソテツ。

場所:熊本県

確認日:2018.6.9

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ツクシヤブソテツ。福岡県にも分布しており、1箇所では貧弱な個体を確認していますが、全体にあまり見かけないヤブソテツです。準絶くらいの扱いでもいい気がしています。

これは熊本県の個体で、石灰岩地で確認しました。

 

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ツクシヤブソテツの最下側羽片。

ヒロハヤブソテツより幅は狭く、やや卵形で、基部はくさび形です。

 

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ツクシヤブソテツの側羽片。

やや幅広で、少し丸っこい印象でした。基脚は90度よりやや狭いくらいのくさび形です。この個体は側羽片基部上側の耳片がほんの少し発達しています。

 

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ツクシヤブソテツの頂羽片。

形状はヒロハヤブソテツに似て幅広の頂羽片です。

 

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ツクシヤブソテツのソーラス。

葉裏の全面に散在し、ソーラスは比較的小さめです。

(どこかイズヤブソテツ感がある)

 

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ツクシヤブソテツの包膜。

もうほとんどなくなっていましたが、中央は濃褐色です。

 

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ツクシヤブソテツの葉身基部の中軸らへんの鱗片。

小さめの鱗片が圧着気味についていました。

 

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ツクシヤブソテツの葉柄基部の鱗片。

褐色〜濃褐色の鱗片がやや密につきます。

ヒロハヤブソテツ

種名:ヒロハヤブソテツ

(Cyrtomium macrophyllum (Makino) Tagawa var. macrophyllum, Dryopteridaceae)

解説:各羽片が巨大なヤブソテツ。

場所:福岡県南部(山地などを中心に多分全域に分布)

確認日:2018.6.17

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ヒロハヤブソテツ。湿潤な環境でよく見るように思います。この個体はちょっとした滝のすぐ側の林床に生育していました。

羽片数が少なく、各羽片が大きく幅広いことが特徴です。羽片数は最大で8対程度にはなります。

 

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ヒロハヤブソテツの最下側羽片。

基部は円形で、重なり合うほどに広いです。形状は短広ですが、普通ヒラオヤブソテツよりは明らかに幅広です。

 

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ヒロハヤブソテツの葉身中部の側羽片。

側羽片の基脚は円形で、ツクシヤブソテツ(90度より狭いくさび形)に比べて明らかに円いです。

 

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ヒロハヤブソテツの頂羽片。

他のヤブソテツ類に比べ、幅広の大きな頂羽片です。

幼株でも頂羽片が目立つため、すぐに本種とわかります。頂羽片と1対の側羽片をつけている状態の幼株をよく見かける気がします(頂羽片だけの幼株も見かける)。

 

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ヒロハヤブソテツのソーラス。

他の種と同様に葉裏の全面に散在します。

 

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ヒロハヤブソテツの包膜。

全面が灰白色の場合がほとんどですが、この個体は中央部がやや褐色でした。

 

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ヒロハヤブソテツの葉身基部中軸の鱗片。

鱗片は細く小さめです(ツヤナシヤブソテツ比)。

 

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ヒロハヤブソテツの葉柄基部お鱗片。

濃褐色の鱗片をやや密につけます。

ヤブソテツ(ホソバヤマヤブソテツ型)

種名:ホソバヤマヤブソテツ型のヤブソテツ

(Cyrtomium fortunei J.Sm., Dryopteridaceae)

解説:ヤブソテツ類のうち、各羽片が細い型。

場所:福岡県南部(山地などを中心として全域に分布)

確認日:2018.6.9

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ホソバヤマヤブソテツ型。ツヤナシヤブソテツに比べると側羽片が細く、先端に向けて徐々に狭まっています。また、側羽片数が多く、葉身の頂部では小さくなっています。

以下、ツヤナシヤブソテツ型の葉身。

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見た目全然違うけど、中間型がいるのできれいに分類することは難しいです。

 

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ホソバヤマヤブソテツ型の最下側羽片。

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ホソバヤマヤブソテツ型の側羽片。

ツヤナシヤブソテツ型の基脚が心形になるのに対し、(広い)くさび形になっています。また、葉色はより黒っぽいことが多いです。

以下、ツヤナシヤブソテツ型の側羽片。

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ツヤナシヤブソテツ型ではより幅広く、長方形的で、基脚は心形。

 

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ホソバヤマヤブソテツ型のソーラス。

葉裏の全面に散在します。

 

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ホソバヤマヤブソテツ型(上)とツヤナシヤブソテツ型(下)の包膜の比較。

ホソバヤマヤブソテツ型では包膜の直径が1mmに満たない程度、ツヤナシヤブソテツ型では包膜の直径が1mmを超えています。

 

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ホソバヤマヤブソテツ型(上)とツヤナシヤブソテツ型(下)の葉身基部の鱗片。

ホソバヤマヤブソテツ型ではツヤナシヤブソテツ型に比べて細く小さい鱗片をつけています。

 

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ホソバヤマヤブソテツ型の葉柄基部の鱗片。

褐色〜濃褐色の鱗片がやや密生します。

ヤブソテツ(ツヤナシヤブソテツ型)

種名:ツヤナシヤブソテツ型のヤブソテツ

(Cyrtomium fortunei J.Sm., Dryopteridaceae)

解説:ヤブソテツ類のうち、各羽片が広い型。

場所:福岡県南部(山地などを中心として全域に分布)

確認日:2018.6.9

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ツヤナシヤブソテツ型のヤブソテツです。名前の通りにツヤナシの型が多いですが、ツヤアリの型もまあまあいます。色合いはツヤアリのヒラオヤブソテツ型と同じですが、その他の形態が異なるので、私はこのタイプをヒラオヤブソテツ型だとはみなしていません。

ちなみに次の写真がホソバヤマヤブソテツ型。

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ホソバヤマヤブソテツ型ではより側羽片が細く、徐々に幅が狭まり、葉身頂部にかけて側羽片が目立って小さくなります。あと側羽片の数が多い。

※ちゃんと中間的な型も稀にはいるのですけどね。

 

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ツヤナシヤブソテツ型の最下側羽片。

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ツヤナシヤブソテツ型の葉身中部の側羽片。

いずれも側羽片の基部が湾入(心形)しており、これがホソバヤマヤブソテツ型やヒラオヤブソテツ型、その他のヤブソテツ類との識別点になります。側羽片は短広ですが、ヒラオヤブソテツ型に比べると平行的でより長方形をしています。あと、こういう黄緑色〜緑白色の個体が多い。

 

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ツヤナシヤブソテツ型のソーラス。

葉裏の全面に散在します。包膜はホソバヤマヤブソテツ型に比べて大きく、肉眼でも違うなと思えるくらい差があります。

 

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ツヤナシヤブソテツ型(上)とホソバヤマヤブソテツ型(下)のソーラス。

定規を押し当てて平面になるように撮っています(一応)。この写真では、ツヤナシヤブソテツ型の包膜は1mmを超えており、ホソバヤマヤブソテツ型の包膜は1mmを超えていないことがわかります。

 

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ツヤナシヤブソテツ型の葉身基部の中軸の鱗片。

幅広で大きな鱗片が多くついています。次のホソバヤマヤブソテツ型の同じ部位に比べると明らかに差がありそうです。

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ホソバヤマヤブソテツ型の葉身基部の中軸の鱗片。

 

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ホソバヤマヤブソテツ型の葉柄基部の鱗片。

褐色〜濃褐色の鱗片が密生します。

ヤブソテツ(ヒラオヤブソテツ型)

種名:ヒラオヤブソテツ型のヤブソテツ(Cyrtomium fortunei J.Sm., Dryopteridaceae)

解説:ヤブソテツ類のうち、石灰岩地に多い型。

場所:福岡県北部、西部

確認日:2017.12.3, 2018.6.9

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ヒラオヤブソテツ。ヤブソテツ類の分類は誰かに教わったわけではなく、基本的には筒井さんの本を参考に現地で観察してきた中で、考え識別してきたものです。なので間違いがあるかもしれません。笑

現在ヤブソテツ類にまとめられているホソバヤマヤブソテツ、ツヤナシヤブソテツ、ヒラオヤブソテツ、(ヤブソテツ)の各型は、いずれも無融合生殖種であるほか、各型の間に中間型が存在しており、厳密に分類できない場合もままあります。が、ある程度はメジャーな型とマイナーな型があることも確かだと思います。

これらのうち、ヒラオヤブソテツは県内だと石灰岩地の周辺で多く見られる型で、ホソバヤマヤブソテツやツヤナシヤブソテツのように広くどこでも見られるわけではありません。

特徴は、短広つまり幅広で短く(丸っこい)側羽片(対ミヤコヤブソテツ、ホソバヤマヤブソテツ)、側羽片の基脚が心形ではなく広いくさび形から円形であること(対ツヤナシヤブソテツ)といったところかと思います。葉面の光沢はある個体もない個体もいるので決定打にはなりません。

※上の写真3枚目の型はちょっと怪しい。

 

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ヒラオヤブソテツの最下側羽片。

ミヤコヤブソテツに比べると短広です。また、ツヤナシヤブソテツ型に比べると基脚の心形感は弱いです。

 

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ヒラオヤブソテツの側羽片。

基部の耳片の発達具合はいろいろです。基脚は心形になりません。

光沢がある場合は、ミヤコヤブソテツやナガバヤブソテツ等に比べて脂っこい色合いであるように思います。また、この色合いの光沢は、ツヤナシヤブソテツ型の光沢型でも見られます。

 

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ヒラオヤブソテツのソーラス。

裏面全体につき、ツヤナシヤブソテツ型よりは包膜は小さい印象かな?包膜の中心は濃褐色に(ほとんど)なりません。

 

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ヒラオヤブソテツの葉身基部の中軸の鱗片。

ミヤコヤブソテツと同じくらいで、ツヤナシヤブソテツ型ほど幅広い(大きな)鱗片はつかないように思います。