しださがし

福岡県から九州各地を中心に見つけたシダ植物について紹介していきます。無断での転用・転載は禁止。

コウラボシ

種名:コウラボシ(Lepisorus uchiyamae (Makino) H.Itô , Polypodiaceae)

解説:沿海地に生えるノキシノブ。

場所:宮崎県

確認日:2018.6.3

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こんな場所に生えるのか!と驚くほど過酷そうな環境に生育していました。

パキパキとした質感で、ノキシノブとは似ても似つかないくらい異なる風貌です。

 

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コウラボシの葉身(実葉)。

パキパキとした質感で、表面には細脈がやや隆起?しており凹凸があります。

葉身の長さは1cmくらいのものから5cmくらいのものまでありました。

 

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コウラボシの葉身基部。

葉柄は細長く、葉身が羽根状に流れています。

 

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コウラボシのソーラスの様子。

やや中軸に寄っており、葉身の上半部くらいまでついていました。

この写真からもわかりますが、ノキシノブやツクシノキシノブ等とは異なり、盾状鱗片が細いです(両種が円形であることに対し)。

 

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コウラボシの盾状鱗片の拡大。

狭三角状で、葉柄につく鱗片のような形状で特徴的です。

 

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コウラボシの葉柄基部の鱗片。

ノキシノブやツクシノキシノブのように中央が濃色になることはないです。

ニセヨゴレイタチシダ

種名:ニセヨゴレイタチシダ(Dryopteris hadanoi Sa.Kurata, Dryopteridaceae)

解説:汚れてはいません(その2)。

場所:宮崎県

確認日:2018.6.3

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先生からたくさんいるとは聞いていたものの、正確な場所までは聞いていなかったので不安でしたが、本当にたくさん見つかりました(笑)

陽地で見かけることが多かったですが、林内にも生えていました。陽地に生える場合は、葉色が写真2,3枚目のように黄緑色になり、林内に生える場合は写真1枚目のように緑色でした。

周囲にはヨゴレイタチシダは自生しないため区別には困りませんが、ややオオイタチシダ(アツバ)や光沢のあるナンカイイタチシダに似ている感じです。

ヨゴレイタチシダが重厚感のある渋い雰囲気なのに対し、ニセヨゴレイタチシダは若々しい(水々しい?)感じでした。笑

 

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ニセヨゴレイタチシダの最下側羽片の基部。

ヨゴレイタチシダのように柄が明らかに長いです。葉身10cm程度の幼株でも柄は目立つ印象を持ちました。

 

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ニセヨゴレイタチシダの側羽片基部(中部)。

柄は一応あります。小羽片や裂片はやや丸っこく、厚い質感です。

 

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ニセヨゴレイタチシダの葉身頂部。

頂羽片は不明瞭ですが、やや矛状であることが多かったです。

 

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ニセヨゴレイタチシダのソーラスの様子。

この種の特徴でもありますが、包膜は早落性のため確認できません。位置は中間〜やや辺縁寄り。

羽軸の鱗片の基部はオオイタチシダのように袋状にはならず、また褐色です。

 

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ニセヨゴレイタチシダの中軸の鱗片。

ヨゴレの所以にもなっている圧着ぶりです。ヨゴレイタチが黒褐色であるのに対し、ニセヨゴレでは褐色〜赤褐色といったところでした。

 

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ニセヨゴレイタチシダの葉柄基部の鱗片の様子。

新しいものでは褐色〜赤褐色で、細長いです。ヨゴレイタチシダも葉柄のごく基部の鱗片は褐色ですが、ヨゴレの鱗片は真っ直ぐで、ニセヨゴレではややわしゃわしゃしていました。

ヨゴレイタチシダ

種名:ヨゴレイタチシダ(Dryopteris sordidipes Tagawa, Dryopteridaceae)

解説:汚れてはいません。

場所:鹿児島県

確認日:2018.5.4

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久しぶりの更新な気がします。

と言うのも、この時期はスミレやツツジ、カヤツリグサ等の春が同定適期なやつらを探し回っているもので...。笑

ヨゴレイタチシダは九州北部にはいないため、見てみたかった種の一つでしたが、鹿児島県でふと見つけることができました。

遠目にはコバノカナワラビ?と一瞬思う程、葉面には強い光沢があります。名前のヨゴレというのは、圧着した鱗片で中軸や羽軸が汚れて見えることから...。

 

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ヨゴレイタチシダの中軸。

鱗片が圧着していることがわかります。拡大しているため疎らに見えますが、遠目にはびっしりと密に張り付いているように見えます。

 

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ヨゴレイタチシダの最下羽片。

羽片の柄はオオイタチシダに比べると明らかに長く、葉質はアツバのオオイタチと比べてやや薄いくらいでした。最下小羽片は発達〜やや発達といった具合でした。

 

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ヨゴレイタチシダの即羽片と小羽片の様子。

金属光沢のある深緑色で、重厚感があります。鋭鋸歯縁ですね。

ちなみにこれは冬越えした葉で、今は展葉の時期でした。

 

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ヨゴレイタチシダの葉身頂部。

不明瞭〜やや鉾状でした。金属光沢強い。

 

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ヨゴレイタチシダのソーラス。

ソーラスは中間生でした。包膜は所々に残っています。

また、羽軸の鱗片基部は袋状にはなりません。

 

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ヨゴレイタチシダの葉柄基部の鱗片の様子。

葉柄中上部の鱗片は黒褐色ですが、基部の鱗片は明るい褐色で長かったです。

オシャグジデンダ

種名:オシャグジデンダ(Polypodium fauriei Christ, Polypodiaceae)

解説:高嶺のシダ、的な冬緑性のやつ

場所:福岡県東部

確認日:2016.11.20、2018.3.25、2018.4.15

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「高嶺のシダ」と書いたのは、県内で見られる主な個体群のだいたいが高木の樹上に着生しているため。笑

冬緑性なので、秋口から葉を展開しているものと思いますが、冬になると目立つため、自生地ではちらほらと見かけます。

この写真のように、希には手の届く場所に生えていたりします。

カラクサシダが変色し始める時期でも、割と綺麗な色を保っていました。

 

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ちなみに通常の生育環境はこんなところ。真ん中の高木の上の方についているのがわかるかと思います(わりと綺麗な写真になってた笑)。

 

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こんな感じに。

同じく冬緑性のアオネカズラよりは湿潤な環境を好んでいるような気がします。

 

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オシャグジデンダの葉身頂部の様子。

明瞭な頂羽片的なものはなく、裂片の辺縁には微細な鋸歯があります。

 

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オシャグジデンダのソーラス。

小さな実葉のためあまりついていませんが、中間性であることはわかります。

 

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オシャグジデンダの根茎。

チリチリな褐色の鱗片がついています。太さは3mmくらいでした(※これは小株)。

 

標本にすると葉身がぐるっと丸まります(押さえが甘い場合)。

コケシノブ

種名:コケシノブ(Hymenophyllum wrightii Bosch, Hymenophyllaceae)

解説:コケシノブそのもの

場所:福岡県西部、東部

確認日:2016.11.20、2018.4.8、2018.9.17

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福岡県内ではごく希なコケシノブです。というかコケシノブです。

西部の自生地は私が新たに見出したもので、東部の自生地ともに岩面に着生していました。東部にはまとまった群落がありますが、西部ではほんの50cm四方の個体群を偶然見つけたくらい。

 

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コケシノブの葉身(2枚)

各軸の分岐の角度が狭いことが本種の特徴で、角度は40°くらいかな。裂片がでろでろと長く伸びていることも他のコケシノブ類との違いです。でろでろと葉身も細長いことが多いです(でろでろという表現が的確かどうかは微妙)。

 

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コケシノブの葉身の裏面。

キヨスミのような宿存性の鱗片はありません。

 

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コケシノブのソーラス。

包膜はニ弁状で、唇弁の辺縁は全縁〜波状縁といった具合でした。

 

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コケシノブの根茎。

Hymenophyllumに特徴的な針金のように細い根茎です。赤褐色の鱗片が見られました。